IgA腎症と口腔細菌の関連性〜重症化予防のために歯科ができること〜
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IgA腎症とは?
IgA腎症は、体の免疫を守る「IgA」という抗体が原因で腎臓に炎症が起こる病気です。
日本には約3万3千人の患者さんがいると推計され、小児から成人まで幅広い世代に発症します。
- 血尿(尿に血が混じる)
- タンパク尿(尿にタンパク質が出る)
- むくみ・高血圧
初期は無症状であることが多く、健診で偶然発見されることも少なくありません。
放置すると腎臓の機能が低下し、最終的には透析や腎移植が必要となるケースもあります。

発症のメカニズム
- 通常とは異なる 糖鎖異常IgA がつくられる
- 体がそれを異物と認識し、抗体を産生する
- IgAと抗体が結合し、免疫複合体を形成
- その複合体が腎臓(糸球体)に沈着し、炎症を引き起こす
その結果、腎臓がダメージを受け、血尿やタンパク尿が現れます。

治療法
口呼吸の習慣があると、唾液の洗浄・抗菌作用が低下し、細菌が繁殖しやすくなります。鼻詰まりや口呼吸が続く場合は、耳鼻咽喉科の診察が必要になることもあります。
予後
20年経過すると、30〜40%の方が末期腎不全に進行し、透析を余儀なくされています。
透析になると仕事や生活への影響も大きく、患者さんにとって大きな負担となります。
IgA腎症と口腔細菌の関係
近年の研究で、口腔内の環境とIgA腎症の重症化に関連がある可能性が報告されています。
- 腎機能が低下していた患者さんの多くに「むし歯だらけの口腔状態」がみられる
- 歯科治療を行うと尿タンパク量が減少した症例もある

腎臓内科の**三崎太郎先生(聖隷浜松病院 腎センター長)**は、IgA腎症の悪化要因として口腔細菌に注目し、臨床と基礎研究の両面から取り組まれています。
参考:口腔・扁桃・上咽頭を病巣炎症とする病巣疾患(堀田修「病巣疾患」日本臨床、79巻 7号、2021年より改変)
歯科でできる重症化予防

IgA腎症を悪化させないために、歯科が担う役割は大きいと考えられます。
- 定期的な歯科健診でむし歯・歯周病を早期発見
- **プロによる口腔内清掃(PMTC)**で細菌を減らす
- 患者さん自身のセルフケア指導(正しい歯磨き・フッ素利用など)
これらの取り組みが、腎臓病の進行抑制や全身の健康維持につながります。
まとめ
IgA腎症は放置すると透析に至る怖い病気ですが、口腔ケアによって重症化を防げる可能性が注目されています。
「むし歯や歯周病は口の中だけの問題」と思われがちですが、実は全身の病気とも深く関わっているのです。
だからこそ、腎臓病の患者さんに限らず、定期的な歯科受診とお口の健康管理がとても大切です。





