むし歯菌が脳や心臓にも? 最新研究で注目されるCnm陽性ミュータンス菌とは
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むし歯菌が脳や心臓にも?
最新研究で注目されるCnm陽性ミュータンス菌とは
「むし歯菌は歯に穴をあけるだけの細菌」と思っていませんか?
近年の研究では、むし歯の原因菌である**ミュータンス菌(Streptococcus mutans)**の一部が、脳や心臓、腎臓など全身の病気と関係している可能性が報告され、注目を集めています。
もちろん、「むし歯菌が直接これらの病気を引き起こす」と証明されているわけではありません。しかし、お口の健康が全身の健康に深く関わることは、多くの研究で明らかになってきています。
今回は、歯科専門誌**『QUINT ORAL Information 2026』**で紹介された内容をもとに、Cnm陽性ミュータンス菌について分かりやすくご紹介します。

ミュータンス菌には2つのタイプがあります
ミュータンス菌は、むし歯の原因菌としてよく知られています。
実は、このミュータンス菌には大きく分けて2つのタイプがあることが分かっています。
Cnm陰性株(約80~90%)
一般的なミュータンス菌で、歯の表面に付着してむし歯の原因となります。
Cnm陽性株(約10~20%)
こちらは特殊なタイプで、**コラーゲンと結合する「Cnmタンパク質」**を持っています。
そのため、傷ついた血管や組織に付着しやすいという特徴があります。

全身の病気との関連が研究されています
現在までの研究では、Cnm陽性ミュータンス菌について次のような疾患との関連が報告されています。
- 脳出血・微小脳出血
- 感染性心内膜炎
- IgA腎症
- 潰瘍性大腸炎
- 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
ただし、これらは**「関連が示唆されている」**という段階です。
病気の原因は生活習慣や遺伝、基礎疾患などさまざまな要因が重なって起こるため、Cnm陽性ミュータンス菌だけが病気を引き起こすわけではありません。
なぜ全身へ影響すると考えられているのでしょうか?
歯ぐきに炎症があると、歯みがきや食事、歯科治療などをきっかけに、お口の細菌が一時的に血液中へ入り込むことがあります。
通常は免疫によって排除されますが、Cnm陽性ミュータンス菌は傷ついた血管のコラーゲンに付着しやすく、血管の修復を妨げたり、炎症を長引かせたりする可能性が基礎研究で示されています。
そのため、世界中で研究が進められています。


感染性心内膜炎との関係
心臓の弁に病気がある方や人工弁が入っている方では、血液中に入り込んだ細菌が心臓に付着し、感染性心内膜炎を起こすことがあります。
そのため、
- 人工弁置換術を受けた方
- 感染性心内膜炎の既往がある方
- 一部の先天性心疾患がある方
では、抜歯などの歯科治療前に抗菌薬による予防投与が必要となる場合があります。
歯科では、日本循環器学会などのガイドラインに基づいて適切に対応しています。
一番大切なのは「歯ぐきから出血させないこと」
今回の記事で特に印象的だったのは、
「細菌を完全になくすこと」ではなく、「細菌が血液中へ入り込む入口を作らないこと」が大切という考え方です。
そのためには、
- 毎日の丁寧な歯みがき
- 歯間ブラシやデンタルフロスの使用
- 歯周病の早期治療
- 定期的な歯科健診
- プロフェッショナルクリーニング
を続けることが重要です。
歯ぐきの炎症や出血を減らすことは、お口だけでなく全身の健康を守ることにもつながると考えられています。

小林歯科医院から
「歯ぐきから少し血が出るくらいなら大丈夫」
そう思って放置してしまう方は少なくありません。
しかし、歯ぐきからの出血は歯周病のサインであり、お口の中で炎症が起きている証拠です。
近年は、歯周病や口腔細菌と糖尿病、心血管疾患、誤嚥性肺炎など全身の健康との関係について、多くの研究が進んでいます。
今回ご紹介したCnm陽性ミュータンス菌も、その一つとして注目されている細菌です。
毎日のセルフケアに加え、定期的な歯科医院でのメインテナンスを受けることで、お口の健康を守り、全身の健康維持にもつなげていきましょう。
気になる症状や歯ぐきからの出血がある方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 『QUINT ORAL Information 2026』
「ミュータンス菌が引き起こす全身疾患の基礎知識 知っておきたい!う蝕の現在地」 - 仲野和彦(大阪大学大学院歯学研究科 小児歯科学講座)
- 日本循環器学会「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」
- 日本小児歯科学会関連文献
歯科医師として一つ補足すると…
今回の記事は非常に興味深い内容ですが、紹介されている研究の多くは基礎研究・動物実験・観察研究が中心です。現時点では「Cnm陽性ミュータンス菌が全身疾患の原因である」と結論づけられているわけではありません。
しかし、「お口の炎症を減らすことが全身の健康にも良い影響を与える」という考え方は、現在の予防歯科・歯周病治療の重要な考え方の一つです。
日頃からお口の健康を守ることが、将来の健康づくりにつながる可能性があります。ぜひ定期的な歯科受診を習慣にしていただければと思います。





