🦷 口腔機能低下症の要素を徹底解説 **噛む力・舌の動き・嚥下を守る検査と義歯治療の最新情報**
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🦷 **口腔機能低下症の要素を徹底解説**
噛む力・舌の動き・嚥下を守る検査と義歯治療の最新情報

■ はじめに:
「食べる」ことは、歯だけでなく“全身の健康”につながっています
年齢を重ねるにつれ、食事の時間が以前より
- 疲れる
- 時間がかかる
- 飲み込みづらい
と感じる方が増えています。
しかしそれを「年のせいで仕方ない」と思い込み、受診が遅れてしまう例も少なくありません。
実はその背景に潜んでいるのが、
口腔機能低下症(オーラルフレイル) です。
これはむし歯や歯周病のように痛みが出て気づく病気ではなく、
多くの場合、
- 噛みにくい
- むせる
- 口が乾く
- 発音が不明瞭
- 食べる量が減る
- なぜか疲れやすい
といった 「ごく小さな変化」 から始まります。
こうした変化が重なると、
「食べない → 筋力低下 → 活動量低下 → フレイル」
という悪循環につながることがあります。
口腔機能を早期に評価し改善することは、
人生の質(QOL)を守るうえで非常に重要 です。

資料)一般社団法人 日本老年歯科医学会 より
【歯科医療のニーズの変化(治療中心 → 機能管理 → 多職種連携)】

資料)中医協(1 歯科医療を取り巻く現状及び歯科医療提供体制より)
1. 口腔機能低下症とは?
痛みなく進行する “気づきにくい病気”
口腔機能低下症とは、
「食べる」「噛む」「飲む」「話す」といった
生活の基本機能が総合的に低下した状態 を指します。
ゆっくり進むため、初期は自覚が乏しいのが特徴です。
例えば、
- 前より肉が噛みにくい
- むせやすい
- 発音が不明瞭になってきた
こうした軽い症状も、口腔機能低下のサインかもしれません。
放置すると、
栄養低下 → 筋力低下 → フレイル → 誤嚥性肺炎
へつながる恐れがあります。
【口腔機能低下症を構成する7つの要素】

資料)一般社団法人 日本老年歯科医学会 より
2. 口腔機能低下症を構成する7つの要素
“どこが弱っているか” を見える化する「口腔機能精密検査」
歯科医院では、厚労省が定めた
7つの精密検査 を組み合わせて口腔機能を評価します。
◆ 7つの検査項目(保険算定項目)
- 口腔不潔(舌苔・細菌数)
- 口腔乾燥
- 咬合力低下
- 舌口唇運動機能低下(パタカテスト)
- 舌圧低下
- 咀嚼機能低下
- 嚥下機能低下
以下、それぞれの方法・基準値を解説します。
1)口腔不潔(口腔衛生状態不良)
① 舌背上の微生物数
- 機器:口腔内細菌カウンタ(パナソニック)
- 方法:滅菌綿棒で舌背を擦過し、細菌数を測定
- 表示:レベル1〜7、細菌数(CFU/mL)
●基準値
- レベル4以上
- 総細菌数 3.162×10⁶ CFU/mL 以上
→ 口腔衛生状態不良
※保険未収載
② 舌苔スコア(TCI:Tongue Coating Index)
舌を9分割し、舌苔を0〜2の3段階で評価:
- スコア0:舌苔なし
- スコア1:薄い舌苔
- スコア2:厚い舌苔
合計点(0〜18点)からTCI(%)を算出。
●基準値:TCI 50%以上(9/18以上)


2)口腔乾燥
① 口腔粘膜湿潤度検査(Mucus / Murata)
- 舌尖10mm部で3回測定、中央値で評価
●基準値:27.0 未満 → 口腔乾燥



② サクソンテスト
- 滅菌ガーゼを2分間噛み、前後の重量差を測定
●基準値:2 g / 2分 以下
【Photo②:Mucus(ムーカス)本体写真】
3)咬合力低下(当院では Oramo-bf )
① 咬合力測定
▼ 当院採用機器
- デンタルプレスケール II(GC)
- 口腔機能モニター Oramo-bf(YOSHIDA)
●プレスケールの基準値
- プレスケール:200N 未満
- プレスケール II(フィルタあり):350N 未満
- プレスケール II(フィルタなし):500N 未満
●Oramo-bf の基準値
- 375N 未満 → 咬合力低下
Oramo-bf はセンサーを咬むだけで、
その場でデジタル表示される使いやすい咬合力計 です。
軽量で持ち運びも容易なため、訪問診療でも活躍します。



② 残存歯数
- 20本未満 → 咬合力低下のリスク大
4)舌口唇運動機能低下(ODK)
- 機器:健口くんハンディ、毎日パタカラ
- 方法:/pa/ /ta/ /ka/ を各5秒連続発音
●基準値:1秒あたり6回未満



5)舌圧低下
- 機器:JMS舌圧測定器
- 方法:舌でバルーンを押し潰し 3回測定、平均値で評価
●基準値:30 kPa 未満


6)咀嚼機能低下
① 咀嚼能力検査(グルコセンサー法)
- 咀嚼ガム「グルコラム(GC)」を20秒咀嚼
- グルコセンサー GS-II で糖の溶出量を測定
●基準値:100 mg/dL 未満


② 咀嚼能率検査(グミゼリー)
- 専用ゼリーを30回咀嚼
- 断片を視覚資料と比較しスコア0〜9で評価
●基準値:スコア2 以下

7)嚥下機能低下
① EAT-10
- 10項目の質問票
- 3点以上 → 嚥下障害の疑い

② 聖隷式嚥下質問紙
- 15項目の質問
- Aの項目が1つ以上 → 摂食・嚥下障害の疑い
【フレイルの進行図(プレフレイル → オーラルフレイル → フレイル)】

資料)日本歯科医師会 オーラルフレイルとは(オーラルフレイル概念図 2019 年版)より
3. 成人期にも起こる「口腔機能の衰え」
長年の積み重ねが、現在の機能に影響します
口腔機能低下症は高齢者だけの問題ではありません。
40代・50代から静かに進行するケースも多くあります。
例えば、
- 若い頃のむし歯・欠損治療の影響
- 硬い物を避ける食生活
- 噛む回数の少ない生活
- 口呼吸習慣
- 加齢による筋力低下
こうした積み重ねが “今の口腔機能” をつくっています。
【成年期の口腔機能低下のパターン】
成年期(40〜60代)は、歯の本数が多く、乾燥や不潔も少ないため、
口腔機能が低下していても気づきにくい 時期です。
口腔機能が低下するパターンは、次の3つに分けられます。
❶ 小児期〜青年期に十分な機能が育たなかったタイプ
幼少期の咀嚼習慣・口呼吸・舌癖などの影響で、
もともとの基礎機能が弱いまま成人したケース。
❷ 成年期に歯を失い、適切に治療されなかったタイプ
欠損・むし歯・歯周病の放置により
咬合・咀嚼・舌の動きが徐々に低下するケース。
❸ ❶の基礎機能不足に ❷ の欠損が重なったタイプ
基礎機能が弱い人がさらに歯を失うことで、
複合的に大きく機能が低下しやすいケース。
🔍 成年期は“気づきにくい低下”が起こりやすい
- 乾燥が少ない
- 舌苔が少ない
- 歯が多い
ため、他の機能で補ってしまい、
機能低下の自覚が遅れやすい のが特徴です。
矯正治療や補綴治療の前後で計測しても、
- 治療前から基準値以下の患者がいる
- 治療後すぐに改善しない項目がある
ことは珍しくありません。
🌱 リハビリで治療後に機能が向上する
治療後に
- 食事指導
- 舌・唇のトレーニング(口腔リハビリ)
を組み合わせることで
機能がさらに改善していくケースが多い こともわかっています。
4. 義歯治療は“機能の医療”
義歯は単に「噛むための装置」ではありません。
舌の動き、嚥下のしやすさ、咬合バランスなど、
口腔機能そのものに大きな影響を与える医療 です。
■ 古い義歯で起こりやすいトラブル
- 舌が動きにくい
- 食べ物が溜まりやすいデッドスペースの形成
- 飲み込みづらさの増加
- 咬合平面の乱れ
- 咀嚼効率の低下
これらは、義歯が“合っていないサイン”であると同時に、
口腔機能そのものを悪化させる原因 となり得ます。


■ 新しい義歯で期待できる改善
- 舌の動きがスムーズになる
- 嚥下がしやすくなる
- 咬合力が向上する
- 食事の疲れが減る
- EAT-10(嚥下指標)の改善
義歯を適切に設計することで、
食べる・飲み込む・話すといった日常の機能が大きく向上することが多くあります。


5. 小林歯科医院でできるサポート
当院では、高齢期の患者さまが「しっかり食べられる」ように、
口腔機能の評価 × 義歯治療 × リハビリテーション を組み合わせた治療を行っています。
① 口腔機能精密検査(保険適用)
7つの項目を数値化し、どの口腔機能が低下しているかを見える化します。
② 改善ポイントの整理
舌圧・咬合力・舌口唇運動・嚥下など、必要な部分を丁寧に分析します。
③ 義歯治療・口腔リハビリのご提案
機能に合わせた義歯の設計や調整、舌・口唇トレーニング、食事指導などを組み合わせて治療します。
④ 定期的な再評価
義歯の維持調整とともに、口腔機能が落ちないよう継続的にサポートします。
■ おわりに
「食べる力」は、そのまま“人生の質”につながっています。
噛めること、飲み込めること、楽しく食事ができることは、
高齢期の健康と生活の充実に欠かせない大切な力です。
- 噛みにくい
- 飲み込みづらい
- 入れ歯が合わない
- むせる
- 食事が疲れる
こうしたサインがある場合、
それは 口腔機能が低下し始めているサイン かもしれません。
ぜひ早めにご相談ください。
小林歯科医院は、患者さま一人ひとりの「食べる力」を、生涯にわたり支えてまいります。





